これまであまり日本語入力システムにはこだわっておらず、基本的にはOS標準の日本語入力システムを使っていたが、最近ATOK Passportをインストールして使い始めているところである。今の段階では使いこなせている段階には達していないもの、それなりに利便性を感じているところではある。今回は日本語入力システムやATOKについていろいろなことを書いてみたい。
日本語入力システムとは?
日本語入力システムは、PCやスマートフォン、タブレットなどで日本語を入力するための諸々の処理(例えば、ローマ字などを使って仮名を入力する、仮名から漢字に変換するなど)を行うために必要となるシステムである。
というのも、日本語の場合は英語などのように直接文字を入力することができないという制約があるために作られた仕組みである。
なお、上記の制約は日本語のみならず、中国語や韓国語など、文字の種類が多くて、すべての文字に1つのキーを割り当てるのが非現実的であるのであれば共通しており、それらの言語・文字を入力するためのシステムがそれぞれ開発されていて、そのシステムが「インプットメソッド」と呼ばれている。したがって、日本語入力システムはインプットメソッドでも日本語を入力するためのものといえる。
なお、日本語入力システムでは、今日では以下のものがよく使われているといわれている。
- Microsoft IME (Windows標準)
- 日本語入力プログラム (macOS標準)
- Google日本語入力 (Googleが開発している日本語入力システム。オープンソース版はMozcとして開発されてる)
- ATOK (今回扱う)
- Anthy (GNU/Linuxディストリビューションなどで採用されることがある)
ATOKとは?
ATOKは、ジャストシステムが開発・販売している日本語入力システムで、1982年にCP/M向けのかな漢字変換システム『KTIS((『Kana-Kanji Translator Input System』の頭文字に由来))』として登場したのがはじまりで、その後1983年にはNEC PC-100向けに開発されたワープロソフト『JS-WORD』に組み込まれる形で登場した。1985年にはNEC PC-9800シリーズ向けに発売された『jX-WORD太郎』で現在の『ATOK』の名称に変更(ATOK3)、同年に『一太郎』が発売された際にはフロントエンドプロセッサとしてほかのプログラムと組み込んで動作できるようになった(ATOK4)。
初期のATOKではその歴史的経緯から一太郎の付属ソフトとしての立ち位置であったが、1989に発売されたATOK7からは単体販売が始まり、1993年に登場したATOK8からは従来のMS-DOS版のみではなくMacintosh版やWindows版が登場((Windows版は1994年の発売))し、以降は徐々にWindows版を中心としたものへとなっていった。2011年にはAndroid版が登場、iOS版は2014年に登場した。
当初は買い切りのパッケージソフトであったが、個人利用においては定額制のサブスクリプションモデルの『ATOK Passport』に移行している。『ATOK Passport』は、2008年からは定額で利用できるサービス『ATOK定額制』がWindows版向けに開始、2009年にはMac版にも同様のサービスが開始したことにはじまり、2011年に現在の名称へリニューアルした。その後、2018年からは単体での買い切りを終了((Windows版に限っては2021年版までは一太郎の同梱として買い切り版の提供が継続されていた))、2022年からは完全にATOK Passportへ一本化、Android版およびiOS版も2021年10月末で買い切り版のサポート終了、11月からはATOK Passportへ移行した。
ATOKを使ってみて~他の日本語入力システムと比較しながら~
ATOKを使ってみたところ、Microsoft IMEやmacOSの日本語入力プログラムなどのOS標準の日本語入力システムや、無償で利用可能なGoogle日本語入力とは違い、ATOKはサードパーティ有償での提供であることもあって、日本語入力に関連する機能は充実しているといえる。
例えば、Microsoft IMEやmacOSの日本語入力プログラムにおいては、よくある誤用やら抜き言葉やさ入れ言葉など共通語としては不正な表現の場合であっても指摘されることはないが、ATOKにおいては変換時に指摘する機能が含まれている ((Windows版およびmacOS版で確認。iOS版では誤用の指摘こそ行われないものの誤用と思われる読みに対する変換候補が表示される)) 。
また、しばしばみられる「雰囲気」の読み間違いとして、「ふいんき」が挙げられるが、ATOKでは「《ふんいき》の誤り」と指摘したうえで変換候補に挙がる。同様の指摘はGoogle日本語入力でもあり、「<もしかして: ふんいき>」と表示した上で変換候補に挙がる。一方で、macOSの日本語入力プログラムでは誤用の指摘はないものの「雰囲気」が変換候補に挙がり、Microsoft IMEでは「雰囲気」への変換は行われない。他にも「やむを得ない」はしばしば「やむおえない」と誤用されることがあり、この場合はATOKでは「《「やむをえる」》の誤り」と指摘した上で修正可能。それ以外は指摘がなかった。
使ってみた限りでは、変換精度では他の日本語入力システムとそこまで大きな差異がある印象はなかった。操作感覚としてもMicrosoft IMEやGoogle日本語入力とはそこまで大きく異なるようにはなっておらず ((この点については、macOSの日本語入力プログラムでライブ変換を有効にした場合は他の日本語入力システムと大きく変わる挙動を見せる)) 、その上でATOKが差別化しているポイントとしては、日本語の誤用を指摘して修正できる機能が大きいと考えている。
最後に
今回は自身で日本語入力システムとしてATOKを利用し始めたことで、他の日本語入力システムも触ったりしながら本記事を書いてみた。ATOKは有償の日本語入力システムということもあって、日本語入力に際して便利な機能があり、その中でも誤用や共通語として問題のある表現の際にそれを指摘してくれる機能がビジネス文書の作成やライティングなどにおいて有用性があるといえるが、一方でATOKならではの機能に価値を見いだすかどうかでATOKを利用するか競合する無償の日本語入力システムで十分かが変わってくるので、一概におすすめできる日本語入力システムというわけでもないと考える。
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