私は趣味的な理由ではあるものの、個人用に万年筆やそれに近いタイプの筆記具を何本か持っている。それに加えて付けペンで字を書くこともしばしばあり、必要に応じて使い分けているといったところだ。ここでは万年筆に興味を持った人がどんな万年筆を選べばよいのかなどについて書いてみたい。
最初の一本としておすすめの万年筆は?
万年筆を始めて買う方はどんな万年筆があるのかわからない場合が多いし、失敗する可能性を考える人も少なくない。ここでは私が最初の一本としてどんな万年筆を選べばいいのか、大体の目安を書いてみたい。
最初は安価な万年筆でも十分に使っていける
実のところ、最初の一本としては高価な万年筆を買う必要はなく、10,000円未満の万年筆でも十分に使っていけるものは少なくない。
例えば1,000円クラスならパイロットのカクノ、プラチナ万年筆のプレピーやプレジール、セーラーのハイエースネオやふでDEまんねんなどが挙げられる。これらの価格帯では万年筆としての実用性は十分確保されているものが多い一方。ただし、この価格帯はどちらかというと入門向けの位置づけが多く、より高価格帯へのステップアップを想定したものと考えた方がよいものが多い。
やや高価な2,000~3,000円クラスになるとパイロットならライティブやコクーン、セーラーならプロフィットジュニアやレクルなどが挙げられる。これらはデザイン面でもより高価格帯の万年筆と遜色ない本格的なものになっているものが多くなり、ある程度長く使っていくことを想定したものへとなっていく。
海外メーカーではペリカンからはペリカーノシリーズ、他はラミーからはsafariシリーズなどが挙げられる。
この価格帯は基本的にペン先がステンレススチールとなっている、いわゆる「鉄ペン」に該当し、後述する「金ペン」とは書き味や耐久性で差異があるといわれている。
10,000円以上のものはかなり本格的になる
最初の1本としてはかなり大きな勝負になるものの、より高級な万年筆が欲しい場合は、やはり10,000以上は考えた方がよいだろう。その中でも比較的リーズナブルに買える高級万年筆はたくさんある。
パイロットならカスタム74やカスタムヘリテイジ91、セーラーならプロフィットライト(ゴールドトリム/シルバートリム)、プラチナ万年筆なら#3776センチュリーなどが挙げられる。これらはペン先に金を主体とした合金を用いた、いわゆる「金ペン」のなかではリーズナブルに購入することが出来る万年筆であり、本格的に長く使って行くには金ペンの方が分があるといわれている。
国外メーカーではこの価格帯以上になるとほぼすべて金ペンとなり、鉄ペンとの差別化ポイントの一つとなっている。
海外メーカーではペリカンやパーカー、ウォーターマンなどが比較的安価な価格帯の万年筆を販売している。
補足:万年筆のタイプの違いについて
上記は価格帯に応じてどのような万年筆があるかを提示したが、万年筆の選び方に関連して、いくつかタイプの違いがあるので、それについても記述したい。
鉄ペンと金ペンの違い
上記に置いて、鉄ペンと金ペンについて触れたが、これはペン先の素材の違いについて触れた物である。
鉄ペンはペン先の素材に主にステンレススチールを使ったもの、金ペンは金を用いたものである。金ペンでは金の純度に応じて14K、18K、21Kなどがあり、純度が高くなるにつれて価格が上がる傾向にある。比較的安価な万年筆は鉄ペン、日本メーカーでは1万円クラスから、海外メーカーでは2~3万円クラスから金ペンが出回るようになる。
書き味は鉄ペンではの方が硬く、金ペンの方が柔らかい傾向にあるといわれているが、ペン先の形状等による差異がある。
また、耐腐食性では鉄ペンよりも金ペンの方が優れており、かつては酸性のインクが広く使われていた時は鉄ペンではインクによって劣化を起こしてしまうことから、この点でも金ペンに分があった。今日では日本メーカーでは一部を除きほぼ全て中性またはアルカリ性のインクを使用していること、技術革新等が進んで鉄ペンでもほぼ問題が起こらないように改善されているため、条件次第でもあるが鉄ペンも金ペンに遜色ないほどのものも少なくない。
万年筆のインク補充形式はおもに3タイプに分かれる
また、万年筆で必要となるのはインクであるが、万年筆ではものによってそのインクの補充方法が違っている。インクの補充形式には主に以下の3タイプがある。
- カートリッジ式
- 吸入式
- コンバーター式
カートリッジ式
カートリッジ式は、文字通りインクのカートリッジを使用して万年筆にインクを補充する方式で、カートリッジに万年筆を差し込むだけでインクを供給することが出来る方式である。
カートリッジ式の特徴は、とりまわしがきわめて容易で、かつ万一のインク切れが発生したときにカートリッジを持っている場合は直ちにインクの交換を行うことが出来る点である。一方でカートリッジの規格の問題から、国内メーカーの万年筆の場合は原則として万年筆のメーカーに合致したインクを使用する必要があり、かつインクカートリッジの価格もボトルインクと比較すると高価な傾向があるため、ランニングコストがややかかる難点がある。
吸入式
吸入式は、初期の万年筆で導入されていたインクの補充形式で、今日でも高価格帯を中心とした一部の万年筆では吸入式が導入されている。
吸入式の特徴は、本体がインクタンクの役割を持つことで、大量のインクを吸入することが出来る点である。また、カートリッジインクと比較するとボトルインクは種類が豊富であることから、インクの選択肢が広いことも特徴にある。一方でインクの補充にボトルインクを必要とし、ボトルインクは持ち運びに難があることから、外出先でインク切れを起こした際にインクの補充が不可能または極めて困難になることである。
コンバーター式
コンバーター式は、取り外し可能なインク吸入器(コンバーター)を使ったインクの補充形式で、万年筆の構造としてはカートリッジ式だが、コンバーターを取り付けることで吸入式のようにインクを吸入して使用することが出来る。
コンバーター式の利点は、カートリッジ式の機構を使いながらも自由度の高いインクの選択肢と、まんいちインク切れを起こした場合にはインクカートリッジを持っていればインクカートリッジに交換することでカートリッジ式として使うことが出来る点である。また、コンバーターが劣化した場合もコンバーターだけを交換することが出来ることも利点で、メンテナンス性に優れていることが特徴に挙げられる。難点としては吸入式と比較すると一度に吸入できるインクの量が少ない点である。
また、コンバーターも国内メーカーのものは万年筆と同一のメーカーを購入する必要がある点は要注意である。
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